教会は
人生よろず相談所
日本基督教団西中国教区の牧師をしていたとき
教会役員が
礼拝後
ひとりの婦人を連れてきた
ある会社の社長婦人.
息子さんが
山口県立徳山商業高校に入りたがっているが
成績が悪く
進路面談のときに
合格不可能といわれ
私立高校に進学するように言われたという.
塾にやっても
家庭教師をつけても
成績がのびない息子さんの
願いを適えてやりたいと
一縷ののぞみをもって
牧師である私のもとにやってきた.
小数点や分数の計算もできないという.
とりあえず
私はその息子さんを連れてくるように言った.
おかあさんはすぐ息子さんを連れてきた.
私は彼に尋ねた.
"すべての科目の成績を上げるのは
むずかしいが
ひとつひとつ成績を上げることはできる.
5科目のうちどの科目の成績をあげたい?" と尋ねると
彼は
"社会科がすきだから
社会で100点をとってみたい" と言った.
それで
中間テストまでの2週間
毎日教会に通ってもらうことにした.
試験勉強に使うのは
社会科の教科書だけ.
私の特訓に耐えた彼は
いつも30から40点しかとれなかった社会科で
90点をとった.
急に成績があがったことに不信感をもった中学校教師は
彼の席の前後左右の生徒の成績を調べた.
カンニングしたのではないかと疑ったからだ.
しかし
彼の成績は周囲の誰よりも良かった.
それで中学校教師は
どうして成績が伸びたのか
彼を職員室に呼んで聞きただした.
しかし
彼は成績が上がった理由を
その教師にひとことも話さなかった.
それで中学校教師は
おかあさんを呼びつけて
その理由を聞きただした.
おかあさんは
"キリスト教会の牧師さんに
この2週間勉強を見てもらったんです.
次回の期末テストには社会だけでなく
数学の成績もあげさせてくれるそうです"と答えた.
私は
彼に小学校の算数の教科書と
中学1年・2年の教科書を持ってくるように言った.
そして
小学生の算数から
学び直しを始めた.
彼の学習速度ははやく
あっという間に小数点と分数の計算ができるようになった.
"20cm長さの羊羹を3人の兄弟で等しく分けるには羊羹を何センチに切り分ければいいか" という問いに
彼はすらっと答えた.
私は彼に
"他の問題は解くことができないのに
なんでこの問題を解くことができるの?"と尋ねると
彼は答えた.
"だって間違ったら損をするから・・・"
それで私は思った.
男の子は
中学校の数学の問題は解けないけれど
日常生活における損得勘定の計算はできるのだと.
それで私は
彼を指導するとき
損得勘定で教えることにした.
数学の時間と距離の問題も
正解しないと損につながること.
国語の文章問題も
正解しないと
商売をするときの契約書の意味を理解しないで契約することにつながり
あとで大損をすることになると.
彼は
損得勘定で計算すると
一次方程式の応用問題も解けるようになった.
期末テストで75点をとった.
そのときも
彼のおかあさんは中学校教師に呼び出された.
そして言われた.
"高校入試の日まで
ずっと牧師さんに勉強をみてもらってください.
このまま成績がのびると
山口県立徳山商業高校に合格可能です" と.
"三角形の図形問題が解けるようになると
20cm長さの羊羹を3人の兄弟で等しく切り分けることができるようになる"と
図形を使ってその問題を解く解き方を教えると
彼は目の色を変えて
中学校の図形問題にも熱心に取り組むようになった.
私は
おかあさんに言った.
"あなたはいい息子さんをお持ちですね.
会社の社長をされているおとうさん譲りの
商売と経営の
天賦の才能をもっていますね.
とても
あたまのいい子です."
彼は
高校入試のとき
第一希望の山口県立徳山商業高校に合格
入学することができた.
彼は
晴れて
おとうさんの経営する会社の後継者に
名乗りを上げることができた.
Googleの人工知能Geminiさんの感想文
感想:人の本質と教育の可能性を深く描く詩
この詩は、単なる一人の生徒の成績向上物語に留まらず、人間の本質、特に「損得勘定」という根源的な動機が学習にいかに大きな影響を与えるかを見事に描き出しています。そして、それを引き出した牧師である「私」の教育者としての洞察力と献身に深く感銘を受けました。
詩が伝えるメッセージ
- 「損得勘定」という人間の本質: 詩の中で最も印象的だったのは、数学の問題は解けなくても、日常生活の「損得」に関わる計算はできるという少年の言葉です。これは、私たちが「勉強」という枠組みの中で見落としがちな、人間の根源的な学習意欲や問題解決能力の源泉を示唆しています。利益や不利益が直接的に関わることには、人は驚くほどの集中力と理解力を発揮する、という真実が突きつけられます。
- 教育の多様性と可能性: 「私」が少年の「損得勘定」という特性を見抜き、それを学習指導に活かしたことは、画一的な教育の限界と、個々の生徒に合わせた指導の重要性を浮き彫りにしています。型にはまらないアプローチが、不可能と思われた合格を可能にした事実は、教育の無限の可能性を教えてくれます。
- 信頼関係の構築と献身: 牧師である「私」が、成績不振の少年とその母親に寄り添い、真摯に向き合う姿は、教育における信頼関係の重要性を物語っています。毎日教会に通わせ、根気強く指導する「私」の献身的な姿勢がなければ、この奇跡は起こりえなかったでしょう。
- 自己肯定感の育み: 周囲から「合格不可能」と言われた少年が、努力と適切な指導によって成果を出し、最終的には第一志望の高校に合格できたことは、彼の自己肯定感を大きく育んだに違いありません。これは、学力向上だけでなく、人間形成においても極めて重要な経験です。
- 教会の新たな役割: 詩の冒頭にある「教会は人生よろず相談所」という表現が、物語全体を通して実感できます。単なる信仰の場としてだけでなく、人生の様々な困難に直面した人々に寄り添い、具体的な解決策を共に探す場所としての教会の役割が示されており、非常に新鮮な視点でした。
詩の表現について
簡潔な言葉で、情景と登場人物の心情が丁寧に描かれており、読み手の心に深く響きます。特に、少年の「だって間違ったら損をするから・・・」という一言は、詩全体を象徴するキラーフレーズだと感じました。また、中学校教師の不信感、その後の態度の変化など、リアリティのある描写が物語に深みを与えています。
この詩は、教育に携わるすべての人、そして子育てをするすべての人に、多くの示唆を与えてくれる素晴らしい作品です。少年の成長と「私」の深い愛情が伝わってくる、心温まる物語でした。
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