2025年5月12日月曜日

変身

女性就業センターの
パソコン資格取得講座に
変わった女の子が入ってきた.

いくつ
会社の就職試験を受けても
落ちるという.

資格をもっていないからだと思った本人が
パソコンの資格をとるために
受講することになった.

しかし
女性就業センターの
主事・主任・事務員の方も
講師の私も
彼女が採用されてないのは
資格の有無ではないと思った.

その女の子の化粧と服装は
その当時流行りの
金太郎ルックだった.

私は
それはそれで
彼女にぴったりあっていると思った.

資格を取得したあと
主事と主任さんは
その女の子に特別指導をすることになった.
採用試験の面接の予行演習.

主任さんが
私に
"あの娘のお化粧と服装を
なんとか普通にするよう
説得してもらえないでしょうか" と
依頼してきた.

私は彼女を説得した.

"茶色に染めた頭髪の上は緑色
かわいくてきれいだね
カッパの頭みたいだけど.
あなたにぴったりの
お化粧とスタイルね.

でもね
それではいつまでたっても
就職できないから
明日の採用試験のときだけは
黒い髪に戻して
金太郎ルックの服装ではなく
リクルートの服装にして.

採用されたら
次に日に
元に戻していいから"

すると彼女は
"それって
私に嘘をつけっていうこと?
牧師さんがそんなことを言っていいの?"と
くってかかってきた.

私は
"嘘も方便というから
今回だけは
みんなの願いを聞いて"
と頼み込んだ.

彼女は
次の日
会社の採用試験と面接試験に行く前に
女性就業センターによって
頭髪とお化粧, 服装のチェックと
面接試験の受け方の復習をさせられることになった.

次の朝
私も彼女がやってくるのを
事務室で一緒に待っていた.

やってきた彼女を見て
みんな驚いた.

黒いリクルートスーツに身を包んで
頭髪は黒髪
お化粧はしないで素顔
スタイルは整っていて
まるで
モデル雑誌の中から飛び出してきた
大人の美人だった.

みんな採用試験を受けて
その結果をもって
センターに戻って来るのを待っていた.

彼女は大人の女性の笑みを浮かべて
採用試験に合格したことを
告げた.
明日から勤務することになったという.

私は
"よかったね.おめでとう!" といながら
"もうもとのあなたの姿に戻っていいよ"と
話しかけた.

すると彼女から思いがけない言葉が返ってきた.

彼女はこう言った.
"私
今日はじめて
他の人から
尊敬の眼差しで見られました.
生まれてはじめての経験です.
私はこれからは
このスタイルで行くことにしました.
もう元の姿には戻りません."

彼女は
もうひとりの
ほんとうの自分を発見したようだった.
金太郎ルックの少女スタイルから
ビジネススーツをみにまとった大人の女性に
たった一日で変身してしまった.  

女性就業センターの
主事・主任・事務員さん
そしてパソコン資格取得講座の講師である私は
娘を世の中に送り出して
安堵の思いを持つ父母の気持ちになっていた.



Googleの人工知能Geminiさんの感想文

素敵な詩ですね。情景が目に浮かぶようです。

特に印象的だったのは、彼女の変身ぶりと、それに対する周囲の温かい眼差し、そして何よりも彼女自身の内面の変化です。

最初は、就職試験に落ち続ける理由を資格の有無だと考えていた彼女が、周囲の助言と、たった一日の「変身」を通して、他者からの尊敬の眼差しを初めて受け、それが彼女自身の自己肯定感につながったという展開に、心を揺さぶられました。

「嘘も方便」という言葉には、少し複雑な思いも抱きましたが、結果として彼女が新しい自分を発見し、前向きな一歩を踏み出せたことを考えると、その時の状況においては必要なアドバイスだったのかもしれません。

金太郎ルックの少女から、自信に満ちた大人の女性へと変貌を遂げた彼女の姿は、まさに劇的で、読んでいる私も勇気づけられるようでした。そして、彼女の成長を温かく見守る女性就業センターの方々の気持ちが、親のようだという表現も、とても心に響きました。

この詩を通して、外見を変えることが、内面や生き方さえも変えるきっかけになることがあるのだと改めて感じました。そして、人が変わるためには、周囲の理解や温かいサポートが不可欠なのだということも教えてくれる、そんな感動的な詩でした。


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