部落解放同盟新南陽支部のある
被差別部落を尋ねたとき
ひとりの御婦人が
語りかけて来た.
"牧師さん, 聞いて, 聞いて!"
満面に笑みを浮かべて
うれしそうに語りかけて来た.
彼女は
結婚したあと
夫が被差別部落出身者で
新居が
被差別部落の中にあることを知った.
彼女は被差別部落出身者ではなかったけれど
"部落民" として差別を受けるようになった.
彼女は反骨精神の旺盛なひとで
"だったら部落民になってやろうではないか"と
誰よりも部落民になる努力をした.
私が
日本基督教団の牧師として
その被差別部落に出入りするようになったときも
彼女は
こころもことばもふるまいも部落民として
私の前に立ちふさがった.
あるとき
被差別部落をたずねたとき
彼女が
この上もないほどの笑顔で
私に語りかけて来た.
"牧師さん,聞いて,聞いて!"
彼女は
自分のこどもが
部落民として差別されるのではないかと
部落民であることを知らされて
自殺したりしないのかと
とても心配していた.
被差別部落の親は
部落出身であることを
子供にも隠して
部落の子どもたちに支給される
解放奨学金を受けて
こどもたちを高校・大学に進学させた.
彼女は
むすこが高校進学するとき
考えに考えた結果
息子に言った.
"高校に進学したければ
市役所の窓口に行って
'ぼくは部落民です.
解放奨学金を受けるための
手続きにきました'と
自分で申請しなさい" と.
その日
彼女の息子さんは
市役所の窓口で
自分が部落民であることを名乗って
解放奨学金を受ける
手続きを
自分でしてきたそうだ.
彼女は思った,
これで私の息子は
こころないひとの部落差別に
負けることはない.
差別されて死ぬことはないと.
彼女の喜びは
胸から
口からほとばしり出ていた.
その喜びは
私のこころをも包みこんだ.
若干15歳の少年に
かくも厳しい部落差別の現実を
押し付ける
差別社会に怒りを覚えた.
誰も差別されない
被差別部落出身のこどもが
ひとりも差別に苦しむことのない
世の中にしなければ, と.
Googleの人工知能Geminiさんの感想文
この詩を読ませていただき、ありがとうございます。力強いメッセージと、語り手のあなたの深い感動が伝わってきました。
特に印象的だったのは、御婦人の強烈な個性と、その息子さんへの深い愛情です。ご自身は被差別部落出身ではないにもかかわらず、「部落民になってやろうではないか」と決意された彼女の反骨精神には、心を揺さぶられました。差別という不条理な現実に対し、正面から立ち向かう強さに感銘を受けます。
そして、息子さんの将来を案じる母親としての切実な思いが、痛いほど伝わってきました。差別されるかもしれないという不安、自殺してしまうのではないかという恐れ。それらを乗り越え、息子さんに自らの出自を堂々と語らせるという決断は、どれほど勇気がいったことでしょうか。
息子さんが自ら「ぼくは部落民です」と名乗った瞬間の、御婦人の溢れんばかりの喜びが目に浮かぶようです。その喜びは、単なる奨学金を得られたことへの喜びではなく、息子さんが差別に負けない強さを手に入れたことへの、深い安堵と誇りだったのでしょう。
詩の後半で、語り手であるあなたが、15歳の少年に厳しい現実を押し付ける差別社会への怒りを表明されている点も、非常に重要だと感じました。御婦人の喜びと、社会の不条理への怒り。この二つの感情が、この詩に強い力を与えていると思います。
この詩を通して、被差別部落が抱える根深い問題、そしてそれに立ち向かう人々の強さを改めて認識しました。誰もが差別されることなく、安心して生きられる社会の実現に向けて、私たち一人ひとりが考え、行動していく必要性を強く感じました。
素晴らしい詩を共有してくださり、本当にありがとうございました。
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