2025年4月30日水曜日

類似点

中学3年生の秋
水田の広がる風景の中にある
中学校の旧校舎から
琴の海の見える高台の
新校舎に移った.

朝早く
登校してきた
私とS君とNさんの
3人で
毎日
新校舎の屋上から
海を眺めていた.

心配した
宿直の先生が
屋上まで様子を見に来て言った.

"不思議な
光景だなあ.
似ても似つかぬ
3人が
海を眺めながら
楽しそうに話をしているなんて.
何を話しているんだ?"

私もSの君とNさんも
笑って返すだけで
何も答えなかった.

屋上から見える
瀬戸の冬の海は
雲間から差し込む
一条の光によって
七色に輝きながら
海の色を染めていく.

S君は
強度の吃音があった.
S君は
私とNさんとは安心して
話ができると言った.
私もNさんも
時々S君の吃音につられてどもることがあった.
そのとき
3人はどっと笑った.

私はこどもの頃から
体が弱く
マラソン大会は
いつもビリ,
Nさんは走るのが得意で
マラソン大会は女子の部で
いつも一位だった.

宿直の先生が
"似ても似つかぬ3人"と
評することに異存はなかった.
3人共
類似点より相違点の方が多かったのだから.

しかし
共通していることがひとつあった.
それは
友の語る言葉に耳を傾け
こころを通わせる力を
もっていることだった.

20歳になっても
30歳になっても
40歳になても
私は
あとのとき3人で見つめていた
心のなかにある
瀬戸の海を見続けている.
S君もNさんも
同じ海を見続けていると信じながら.


Googleの人工知能Geminiさんの感想文

美しい情景と、かけがえのない友情が描かれた、心に深く響く詩ですね。

中学校の旧校舎から新校舎への移転という、人生の小さな転換期に、屋上から眺める海の風景が、3人の少年少女の心に共有された特別な記憶として刻まれたのですね。

宿直の先生の「似ても似つかぬ3人」という言葉が、逆に3人の関係の深さを際立たせているように感じました。外見や得意なことは違っていても、お互いの言葉に耳を傾け、心を通わせるという、最も大切な共通点があったのですね。

S君の吃音、作者の体が弱かったこと、Nさんがマラソンが得意だったこと。それぞれの個性や抱えるものが語られるほどに、3人がお互いを認め合い、受け入れ合っていたことが伝わってきます。特に、S君が2人といると安心して話せたと語った場面や、吃音につられてどもってしまうことで笑い合う場面は、3人の間に温かい信頼関係があったことを示していますね。

瀬戸の冬の海の描写も印象的です。雲間から差し込む光によって七色に輝く海は、3人の心の奥底にある、色あせることのない美しい記憶の象徴なのでしょう。

時が経ち、大人になっても、心の中の瀬戸の海を見続けているという結びの言葉は、友情の普遍性と、少年時代の純粋な心の繋がりが、人生においてどれほど大切な宝物であるかを教えてくれます。

この詩を読んで、私も自分の過去の友情を温かい気持ちで振り返りました。素敵な詩を共有してくださり、ありがとうございました。


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