小学校に
あがるまえ
一つの事件があった.
私には
同じ町内に
同い年の幼馴染が
二人いた.
二人とも女の子だった.
その幼馴染の一人の
おじさんが
幼児を誘拐し殺害したという
事件が起きて
町内は騒然としていた.
母は
見知らぬ人に
その幼馴染の家を尋ねられても
ほんとうのことを教えてはいけないと言った.
日頃 嘘をついてはいけないと言っていた
母が
「あなたの幼馴染を助けるためだから」と言った.
しばらくすると
新聞記者と思われ7~8人が
ドタドタと走ってやってきて
"ぼく ◯◯さんち何処?"と
尋ねて来た.
私は "あっち!" と
幼馴染の家とは反対の方向を指さした.
7~8人の新聞記者たちは
またドタドタと来た道を帰って言った.
しばらくすると
また 7~8人の新聞記者たちが
戻ってきた.
母は
「あなたは家の中に入りなさい.
あとはおかあさんが話すから・・・」というので
私は家の中に入った.
しばらく時がたってから
母は
「あの事件があってから
◯◯ちゃんと遊ぶ子は誰もいなくなったみたい.
あなた ◯◯ちゃんの幼馴染なのだから
一緒に遊んであげなさい」といった.
遊びに行くと
幼馴染のおかさんは
幼馴染に語りかけた.
「貧乏人の子供と一緒に
遊んではダメ!
貧乏が伝染るから!」
小学3年生になったとき
私は引っ越ししたので
幼馴染の◯◯ちゃんのことは
すっかり忘れてしまっていた.
某医学研究所付属病院で
臨床病理の検査に従事していたとき
妻子のいる事務長さんが
「私の2号さんが受診にくるのでよろしく」といいまわっていた.
やってきた2号さんの顔とカルテの名前を見て
その女性が幼馴染の◯◯ちゃんだとわかった.
私は事務長さんに抗議した.
事務長は
「君はあの娘のことを知っているのか」と
怪訝そうに問いかけてきた.
私は「あの人は私の幼馴染だ! 」と答えた.
彼は
「身内が殺人の罪を犯した
あの娘とつきあってくれるものがいないので
私が付き合ってやってんだ!」と居直っていた.
母にそのことを話すと
母は
「〇〇ちゃんはいい娘よ.
あなた幼馴染なんだから
◯◯ちゃんをお嫁さんにしてあげたらいいのに」と言った.
私は即
「それはありえない」と答えた.
「◯◯ちゃんのおかあさんは
病弱で貧乏人の子に
大切な娘を嫁にやることはできないというに
決まっているから」
生まれた家の玄関のガラス戸に
「吉田屋」という文字が書き込まれていた.
店のつくりは
家具店・・・.
倒産した家の中の
売り物のタンスを並べていた部屋は
ガランドウだった.
差し押さえされて何も無くなった家・・・.
幼馴染のおかあさんが
私を受け入れない理由も
こどもこころに
なにとなくわかっていた.
大人の事情で
まったくの大人の事情で
生き方を
大きく捻じ曲げられた
幼馴染と私.
そんなこどもが
世界には大勢いる!
Googleの人工知能Geminiさんの感想文
幼い頃に体験した、友人の親族による幼児殺害事件という衝撃的な出来事から、物語は始まります。子供心には理解できない大人の世界の複雑さ、そしてその中で翻弄される子供たちの姿が、鮮明に描かれています。
嘘をついてはいけないと教える母親が、「あなたの幼馴染を助けるためだから」と嘘を促す場面は、異常な状況下における大人の葛藤と、子供を守ろうとする必死さが伝わってきます。幼いあなたが、記者の質問に対してとっさに嘘をついた行動は、大人の意図を理解し、無意識のうちに協力しようとした表れであり、痛々しくもあります。
しかし、事件後、幼馴染が周囲から孤立していく様子、そして母親から告げられた「貧乏人の子供と一緒に遊んではダメ!貧乏が伝染るから!」という言葉は、子供の世界にも容赦なく入り込んでくる社会の残酷さを突きつけられます。純粋な子供の友情は、大人の偏見によっていとも簡単に引き裂かれてしまうのです。
時が流れ、偶然再会した幼馴染が、社会的に弱い立場に置かれ、さらに追い打ちをかけるような大人の男性との関係を持っているという事実は、読者の胸を深く締め付けます。事務長の身勝手な言動は、人間の醜さ、そして社会の不条理を象徴しているようです。
それに対する母親の「〇〇ちゃんはいい娘よ。あなた幼馴染なんだから、〇〇ちゃんをお嫁さんにしてあげたらいいのに」という言葉は、一見すると温かいようですが、その裏には、社会の偏見や困難を乗り越えてほしいという願いが込められているのかもしれません。しかし、あなたが即座に「それはありえない」と否定する背景には、子供の頃に感じた、越えられない壁の存在があったのでしょう。
没落した生家、「吉田屋」という文字が残る家具店の描写は、経済的な状況が人々の関係や人生を大きく左右する現実を静かに物語っています。幼馴染の母親があなたを受け入れなかった理由も、子供心に理解できたというくだりは、社会の格差、そしてそれが子供たちの心に深く刻まれることを示唆しています。
「大人の事情で/まったくの大人の事情で/生き方を/大きく捻じ曲げられた/幼馴染と私」という言葉は、この詩の核心であり、子供たちの未来が、自分たちの預かり知らぬところで大きく左右されてしまう理不尽さを強く訴えかけています。そして、「そんなこどもが/世界には大勢いる!」という結びの言葉は、個人的な悲劇にとどまらず、普遍的な社会の問題として、読者に重い問いを投げかけています。
この詩は、子供の視点から描かれた、社会の暗部を抉り出すような作品だと感じました。個人的な経験を通して、社会の不条理さ、そしてそれが人々の人生に与える深い傷を描き出し、読者の心に長く残る強い印象を与えます。素晴らしい詩をありがとうございました。
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