2025年4月19日土曜日

足摺の観音

20歳になったとき
『問わず語り』を読んだ.

戦後になって
はじめて公開され
誰でも読めるようになった.
それまでは
天皇の秘事を綴っているということで
門外不出の本だった.

ひとりの女性が
天皇によって
その弟に払い下げられた.
そのことを悲しんだ女性は
出家して
諸国を行脚した.

瀬戸の海を
船旅しているときに
同船の旅の人から
足摺の観音の話を聞いた.


足摺の岬にひとつの寺があった.
寺には坊主と
その坊主に使えるひとりの小坊主がいた. 
あるとき旅の小坊主がやてきた.
食を乞うたとき
その小坊主は旅の小坊主に
自分の食べ物を半分分けてやった.

繰り返し
旅の小坊主に
自分の食べ物を半分やっている小坊主を見て
坊主はそのことを諌めた.

すると
旅の小坊主は
その寺の小坊主に
「共に補陀落世界にまいらん」といって
小さな小舟にのって
荒海に乗り出した. 

それが何を意味するかを知った
坊主は
泣きながら
「戻って来い!」と叫んだが
ふたりの小坊主は
荒波に姿を消して行った。

その寺の坊主は
自分の中にある
差別のこころが
このような悲劇を招いたとして
足をすり合わせて悔やんだ.

そのことが
足摺の地名の由来になった.

坊主は
聖と俗を分け隔てる
寺の垣根を取り除いた. 
誰でも参ることができる寺にしたという. 

原始仏典の中に
「差別なきこころ
それが仏の浄土である」というのがある.
足摺の岬の寺の本尊は
観音菩薩であったという. 

観音菩薩のいる浄土のことを
南の海のかなたにある
補陀落世界という. 

17歳の高校生のときに
スウェーデンの宣教師から
洗礼を受けた私には
現実逃避からは
差別を克服することはできないと
思われた.

聖と俗を
分け隔てる壁が
今もいたるところにあるのだから
余計にこの話が
こころに残る


Googleの人工知能Geminiさんの感想文

素敵な詩ですね。「足摺の観音」という題名と、20歳で読まれたという『問わず語り』から始まる導入が、読者の心を静かに引き込みます。歴史的な背景と、一人の女性の悲しみ、そして足摺の観音にまつわる伝説が、見事に織り交ぜられていますね。

特に印象的だったのは、二人の小坊主の物語です。分け隔てのない慈悲の心を持つ小坊主と、それを受け入れた旅の小坊主の姿は、純粋で美しいですね。対照的に、坊主の差別心が悲劇を生んでしまうという展開は、人間の心の闇を描き出していて、深く考えさせられます。

「足をすり合わせて悔やんだ」という表現から、坊さんの後悔の念が痛いほど伝わってきます。そして、その悔いから差別をなくそうとした行動は、仏教の教えに通じる深い悟りを感じさせます。

原始仏典の言葉「差別なきこころ それが仏の浄土である」が、この物語の核心を見事に表現していますね。観音菩薩のいる補陀落世界と重ね合わせることで、普遍的な救済の思想が伝わってきます。

最後の、洗礼を受けたご自身の経験から、現実逃避では差別を克服できないと感じられたという一節は、この詩に個人的な深みを与えています。伝説や教えを単に語るだけでなく、ご自身の人生経験を通して、差別の問題に真摯に向き合おうとする姿勢が感じられました。

全体を通して、静かで深い感動を覚えました。歴史、伝説、そして個人的な思いが凝縮された、素晴らしい詩だと思います。


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