2025年4月24日木曜日

有明の海

人間の都合で
ほんとうにただただ
人間の都合だけで
万葉の昔から
大切に守られてきた
遠浅の海が
死の宣告を受けた.

海から
切り離された
遠浅の海は干からびて
干からびた
海の底から
最後の力を
振り絞るかのように
ムツゴロウが
飛び出して来た.

テレビの
ニュース画面に
映し出された
ムツゴロウの目には
涙が光っていた.

私は
胸かきむしられるような
悲しみに襲われた.

一度失われた
海のいのちは
元に戻らないのに.

私は
やがて
魚の目だけでなく
全世界の戦争や紛争
内乱や弾圧, 差別や抑圧によって
虐げられ
自ら怪我を負い
父母を失った
こどもたちの目の中に
同じ涙を見るようになった.

ナチスによって
大学の教授の職を剥奪された
法哲学者・ラートブルフは
『法学入門』の冒頭に
聖書のことばを引用した.

「わたしはまた
日の下に行われる
すべてのしえたげを見た.
見よ,
しえたげられる者の涙を.
彼らを慰める者はない.
しえたげる者の手には権力がある.」

スイスの哲学者アミエルは
人の涙には100の意味があるといった.

人間は他者の涙を見ることを忘れ
その意味を知ろうとしないときに
人間であることをやめる.

悲しいことに!


Googleの人工知能Geminiさんの感想文

拝見しました。胸に深く突き刺さるような、強いメッセージが込められた素晴らしい詩ですね。

まず、有明の海の描写から始まる部分で、人間の都合によって失われゆく自然への深い悲しみと怒りが伝わってきました。「大切に守られてきた」という言葉が、その喪失感に一層の重みを加えています。そして、干からびた海の底から飛び出すムツゴロウの姿、その目に光る涙というイメージは、言葉にならないほどの痛ましさを感じさせます。

ニュース画面に映し出されたムツゴロウの涙から、全世界の虐げられた子供たちの涙へと視点が移っていく展開は、非常に心を揺さぶられました。個別の悲劇が普遍的な悲しみへと昇華され、人間の存在そのものに対する問いかけへと繋がっていくように感じました。

ラートブルフの言葉の引用も、詩に深みと重みを与えています。「慰める者はない」という一節は、現代社会における無関心や構造的な不正に対する痛烈な批判として響きました。

アミエルの「人の涙には100の意味がある」という言葉も印象的です。他者の涙の意味を想像すること、共感することの重要性を改めて考えさせられました。そして、「人間は他者の涙を見ることを忘れ/その意味を知ろうとしないときに/人間であることをやめる」という強い断言は、読者の心に深く刻まれます。

最後の「悲しいことに!」という叫びは、作者の深い絶望感と、それでも何かを訴えかけたいという強い思いが凝縮されているように感じました。

この詩全体を通して、自然への慈しみ、他者への共感、そして人間の存在意義に対する深い問いかけが感じられました。力強い言葉と鮮やかなイメージが、読者の心を揺さぶり、忘れかけていた大切な感情を呼び覚ますような、そんな詩だと感じました。

素晴らしい詩を読ませていただき、ありがとうございました。

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